猛暑、高温障害から作物を守る土壌管理からのアプローチ

猛暑による高温障害が農業経営に深刻な影響を与えています。作物の収量低下を防ぐには、遮光ネットや水やりといった地上の対策だけでなく、土壌そのものの機能を強化する土壌管理が不可欠です。この記事では、物理・生物・マルチングの3つのアプローチで「猛暑に強い土」をつくる方法を解説します。

なぜ、いま土壌管理が猛暑対策の鍵なのか

こんにちは、ソイル・コミュニケーション合同会社の代表の松田です。

近年の夏は「猛暑」という言葉では足りず、「地球沸騰化」とも呼ばれる過酷な環境が続いています。連日の35℃超えに、私たち人間だけでなく、畑の作物たちも悲鳴を上げています。

私自身も、昨年の夏に苦い経験をしました。個人として、NPO法人「京都土の塾」に参加して、家庭菜園的な取り組みとして、一つの畝に様々な夏野菜を育てていました。そのなかで、キュウリの苗3本を育てていたのですが、前の年の2024年7月には1か月間で57本あった収量が、猛暑と空梅雨に見舞われた2025年7月には、わずか10本(前年の約5分の1)にまで激減してしまったのです。一方で、私の隣の畝の方は、土の表面に稲わらを敷き詰めて熱を和らげ、こまめに水を補給することで、収量の極端な低下を防いでいました。 この経験からも改めて痛感したのは、地上の遮光ネットや水やりといった「対症療法」だけでは限界があるということです。今、私たちに求められているのは、植物の生命維持基盤である「土壌」そのものの機能を強化する「地下の根本療法」へのパラダイムシフトです。

※昨年の私の畑の詳しい状況については、Facebookページへの投稿をご覧ください。

物理的アプローチ:土の「黄金比」が熱を遮断する

猛暑に強い土の鍵は、土壌の「団粒構造」にあります。これは、微生物の働きによって土の粒子が小さな「だんご状」の塊になっている状態です。理想的な土は、「固相(土):液相(水):気相(空気)= 4:3:3」だとされています。

  • 保水バッファー: 団粒の隙間にたっぷり蓄えられた水が、日中の激しい蒸散から作物を守ります。
  • 通気冷却: 十分な空隙が、高温で活発になる根の代謝を支え、酸欠や根腐れを防ぎます。

砂質やカチカチに固まった土は、熱が伝わりやすく根が「お湯」に浸かったような状態になりますが、ふかふかの団粒構造は、比熱の高い水と断熱性の高い空気が混ざり合うことで、地温の変化を極めて穏やかにしてくれるのです。 土壌の団粒構造をつくっていくためには、微生物が住みやすい環境をつくるため、完熟たい肥や腐葉土やもみ殻などの有機資材を適度に入れ、適度に耕すことが重要です。

生物的アプローチ:微生物は「地下のエンジニア」

土壌微生物は単なる分解者ではありません。彼らは自ら粘着物質を出して土を団粒化させる「エンジニア」であり、根の表面を覆って根圏の環境を安定させ、熱などのストレスへの耐性を高める役割も果たします。微生物が活発な土壌は、pHの急激な変化を抑える「緩衝能力」も高く、過酷な環境下でも根が栄養を吸収し続けられる環境を維持してくれます。

適切なマルチング:土に「呼吸」させる工夫

地表を覆うマルチングも重要です。ただし、夏場の「黒マルチ」は条件によっては地温を50℃以上に上げてしまうリスクがあるため、猛暑期には逆効果です。

  • シルバー・白黒マルチ: 太陽光を反射して地温上昇を劇的に抑えます。
  • 天然の敷きわら: 伝統的な稲わらは中空構造で断熱性に優れるだけでなく、土壌の乾燥を防ぐ効果があります。さらに隙間から水蒸気が逃げる際の「気化熱」で土を冷やし続ける効果もあります。冒頭に紹介したように、昨年、私の畑の隣の畝の方が稲わらを敷くことで収量の低下を防いだことは何よりも証拠だと思います。

    ただ、最近のコンバインは稲刈りをする際に稲わらをすきこんでしまうため、稲わらの入手が困難な状況もあります。そのため、草刈りをした草を捨てるのではなく、畝に覆いかぶせて稲わらがわりにするなど、いろいろな工夫が必要なようです。

自分の畑の「猛暑耐性」を数値で知る

根本療法を支える「SOFIX」の見える化技術

ところで、自分の畑がどれくらい「猛暑に耐える力」があるのか? それを科学的に数値化するうえで、私たちの提供するSOFIX(土壌肥沃度指標)という土壌診断技術を活用していただけます。その内容は次の点です。

  1. 生物性の診断: eDNA法を用いて、土壌1gあたりの「総細菌数」を測定します。2億個/g以上が健康な土の目安です。さらに、窒素やリンを植物が使いやすい形に変える「物質循環活性」を数値化し、微生物が正常に働いているかを確認します。
  2. 物理性の診断: 土がどれだけ水を蓄えられるかを示す「最大保水容量」や現在の「含水率」を分析し、熱耐性の土台を評価します。
  3. 化学性の診断: 猛暑で土壌微生物の活動が活発になり、有機物が急速に分解されると、その過程で有機酸が発生すると土壌が酸性に傾きやすくなります。さらに豪雨でアルカリ分(カルシウムやマグネシウム)が流出すると、酸性化がいっそうすすみます。SOFIXには㏗の分析項目もあり、適切なpH管理の指標となります。
  4. 資材の適切評価: 土壌の団粒構造を作るうえで完熟たい肥を入れることが有効であると述べましたが、夏場に「未完熟なたい肥」を投入するのは厳禁です。未完熟なものは土の中で爆発的に発酵し、「発酵熱」を発生させるだけでなく、微生物が土の窒素を使い果たしてしまう「窒素飢餓」を引き起こし、作物を枯らす原因になります。SOFIXの資材分析(MQI)を活用すれば、たい肥の品質を見極めることができ、安全で効果的な土づくりが可能となります。

まとめ:猛暑時代を生き抜く『生きている土』づくりを始めよう

猛暑という脅威が常態化するこれからの時代。単一の特効薬はありませんが、物理・生物・化学のバランスを整えた「生きている土」こそが、植物を守る最大のシールドになるのではないかと考えます。

皆さんの大切な作物を守るために、まずは足元の「土の状態」を知ることから始めてみませんか? 土の状態の客観的なデータと、皆さんが実際に経験されてきたことや現場の知恵とをむすびつけて、「生きている土」のマネジメントを一緒に考えてきましょう。

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