季節の料理、養生、土づくり、その先に社会があることを実感ー「土と水と養生で暮らすまちづくり」のイベントに34人が参加

 「土と水と養生で暮らすまちづくり—季節の家庭料理と郷土料理から考える会」が9月30日(月)18:30~ コミュニティキッチンDAIDOKORO(京都信用金庫の共創施設QUESTION8階)で開催され、34人の方々に参加いただきました(主催者・スタッフを含めると45人)。季節の料理を楽しみながら、土と養生、お料理、農業や健康のあり方、環境問題、まちづくり、あらたなビジネスの可能性について語りあう場として当社が企画し、一般社団法人日本養生普及協会様一般社団法人ライブフーズ様の協力のもとで開催されました。

 第一部「農と養生、まちづくりをお料理から考えるトークセッション」では冒頭、料理研究家・土井勝氏のご長男であり、お料理プロデューサーの土井敏久氏が、鰹節と昆布をベースに家庭でも簡単に作れる「二番だし」を参加者の皆さんに飲んでもらい、その美味しさを実感してもらいながら、「二番だし」のつくり方を実演しました。そして、「二番だし」を手作りすることを通して、人と人との対話をしていくことの重要性をつたえました。 

「二番だし」のつくり方を実演する土井敏久さんと伊藤佳世さん
「二番だし」を飲んでみる

続いて、明治国際医療大学・伊藤和憲教授より、東洋医学の「養生」という考え方では、季節の食材にその季節に必要な栄養素が含まれていると考えており、その季節の走りの食材を取ることで、身体を準備することが大切と考えられてきたことが解説され、この日の料理に料理に含まれる素材が、冬に備えて身体を準備するものになっていることが強調されました。そして、今日の病気には社会的要因も大きいとして、「養生」を基本とした地域社会づくりをとして、貧富の格差を含めた社会問題の解決をめざしていく構想がしめされました。

「食と養生」についてお話する伊藤和憲明治国際医療大学教授

 最後に、当社代表の松田より、季節の旬の野菜をはぐくんでいく上で、土壌中の有機物の量やバランス、微生物が重要であることが解説され、土壌の健康診断の指標としてのSOFIX(土壌肥沃度指標)の概要やその事例などがが紹介されました。そして、「土づくり」にこだわった農業と旬の農産物を基本として、人々が心身ともに健康な生活を送れる地域づくり、「土と水と養生で暮らすまちづくり」をよびかけました。

「健康ライフを支える土壌づくり」についてお話する当社代表・松田文雄

 第2部「季節の料理を楽しむ」では、土井敏久さんプロデュースの季節のお料理を楽しみながら、参加者同士で和やかに意見交換しました。

 『実りの秋!養生美健のお献立』

⚪︎秋刀魚の柚子香焼き
⚪︎栗と豚肉の煮物
⚪︎海老のらくがん
⚪︎菊菜としめじの煮浸し
⚪︎里芋のみそ田楽
⚪︎ぶどうのおろし和え
⚪︎新米ご飯
⚪︎お吸い物

季実りの秋!養生美健のお献立
参加者同士で和やかに交流

養生や健康を作るのは個人だけでなく、社会全体で取り組むことという考えに共感–参加者の感想から

 参加者へのアンケートでは多くの感想が寄せられました。その一部をご紹介します。
 参加いただいたみなさんに改めてお礼申し上げます。

〇恥ずかしながら若い頃に養生を学んだときは表面のさらに表層だけで「季節のものを食べて体を養おう」くらいしか理解できてなかったのですが、年の重ねた今、今回のお話を聞いて、「養生は自分という体、体は肉体であり、その先に社会、社会の取り組みあり、それが世界を作っていくこと」ということが何となく体感として分かったような気がします。一朝一夕ではなく、日々の取り組みとして「出汁のとる」=世界を支えていく、ということを実践していきたいと思います。ありがとうございました。

〇有意義な時間を過ごさせていただきました。ありがとうございました。家庭料理は和やかなコミュニケーションの潤滑油になるのだなと感じました。養生や健康を作るのは個人だけでなく、町や社会全体で取り組むことという考えに共感します。ありがとうございました。感想から

〇統合医療で世界の伝統医療を学んでいますが、日本人には日本人に合った養生法があると再認識できました。伊藤先生がおっしゃっていた現代版養生論を、看護師の立場で普及していきたいです。子どもが小さな頃は出汁にこだわって育児してきましたが、さいきん出汁をひかない重ね煮にハマって出汁のうまみを忘れていました。土井先生の二番だしをマスターしたいと思います。松田先生の土と水と養生のご講義、食の根底にある自然界との調和や、土壌ミネラルの重要性、この認識を農家さんや農業関係のみなさんと共有できたことで、真の健康や養生を理解することができ

〇養生の深い意義が理解できました。

〇養生、日本の節句、もう一度見直す必要があると思いました。食材の組み合わせ方は非常に勉強になりました。

〇今回のように美味しい食事があると、実践に繋がるので有難いです。

〇季節ごとに参加したい

〇とても勢いを感じました。美味しいお食事も頂き心豊かになりました。出汁に関して難しい事は考えず昆布出汁は取っていましたが、二番出汁の取り方をお聞きして作ってみようと思います。

〇家庭料理に凝縮された暮らしの知恵、土づくりの大切さ、季節への感性、改めて体感いたしました。

〇地域の方々との交流を含めたその地ならではの多様な展開を期待しております。

、家族に食事を提供しております。手作りを心がけてますが、出汁は顆粒にたよってました。こうしなければならないではない、ゆるい2番出汁は、いろんな可能性があると感じました。ありがとうございます。

〇家族に食事を提供しております。手作りを心がけてますが、出汁は顆粒にたよってました。こうしなければならないではない、ゆるい2番出汁は、いろんな可能性があると感じました。ありがとうございます。

〇高齢者の多くは、食事作りがしんどいと言われます。高齢者の栄養はとても重要で、高齢者に焦点を当てたレシピ作り及びまちづくりに関心があります。


SOFIXを活用した果樹園復活プロジェクト(福岡県朝倉市)のロケ撮影を実施

ソイル・コミュニケーション合同会社は、かねてより福岡県朝倉市で、2014年前の九州北部大水害で使えなくなった果樹園を再生するプロジェクトのお手伝いをしています。土砂崩れなどで荒廃した土地を整地し、流亡した有機物や肥料成分を補い、新たに桃やスモモの苗木を植えるにあたり、SOFIX(土壌肥沃度指標)による土壌診断を活用して頂いています。このプロジェクトを取り組んでいる原田淳一さんは、再生した果樹園を、将来的にはお客さんが桃やすももだけでなく、四季の旬の食べ物や、収穫体験、キャンプなどを楽しみながら心身ともに健康となる「養生」のコンセプトとした観光農園にすることを構想されています。

 このたび当社は、こうしたプロジェクトを広く社会に発信していくためのプロモーションビデオを作成するため、9月14日〜15日、福岡県朝倉市の原田さんの果樹園でロケ撮影を行いました。

 協力して頂いたのは、369(ミロク)ラボの藤添尚子さんです。藤添さんに本プロジェクトのコンセプトをご理解いただいた上で、藤添さんのディレクションのもとで、原田さん、当社代表の松田の3人で果樹園中を歩き回り、ああでもない、こうでもないと議論しつつ、撮影しました。

 今回のプロモーションビデオの作成は、9月30日に開催する「土と水と養生でくらすまちづくりー季節の家庭料理と郷土料理から考える会」のイベントとも連動しており、「土と水と養生」を基本としながら、様々な方と連携して、まちづくりや地方創生、地方から新たな農業やビジネルを生み出していくという方向で取り組んでいます。

【参加者募集】9/30 土と水と養生で暮らすまちづくり—季節の家庭料理と郷土料理から考える会

 ソイル・コミュニケーション合同会社は、「土と水と養生で暮らすまちづくり—季節の家庭料理と郷土料理から考える会」を9月30日(月)18:30~ 京都市役所のすぐ近くにあるコミュニティキッチンDAIDOKORO(京都信用金庫の共創施設QUESTION8階)で開催します。旬のお料理を楽しみながら、土・水と養生で暮らすまちづくりについて語り合いましょう。

 伝統的な健康法である「養生」とは、季節にそった旬の食べ物を頂き、家族や友人、近所の方や仕事仲間と良好な人間関係を築き、健康で美しく、楽しく生きることです。そのためには、土づくりにこだわり、地域の地形や気象条件に根差した農産物が不可欠です。そして地域の旬の食材をつかって心を込めてお料理をつくり、誰かと一緒に食べることが大事です。お料理や農業、健康づくりを通じて、地域の人々がつながり、まちづくりに取り入れられていくことができます。

 季節の料理を楽しみながら、土と養生、お料理、農業や健康のあり方、環境問題、まちづくり、あらたなビジネスの可能性について語り合ってみませんか。

 日 時: 2024年9月30日(月) 18:30~20:30
 場 所: コミュニティキッチンDAIDOKORO
      京都市中京区下丸屋町390−2 QUESTION 8F 
 参加費: 6,600円(税込) 季節のお料理代含む
 参加申し込み:

 簡単に手づくりのお料理が、毎日作れる、二番だしが世界をつなげれる、養生美健の調味料『二番だし』を作り、味わっていただきます。

【プロフィール】
お料理プロデューサー
一般社団法人ライブフーズ代表理事
料理研究家土井勝氏の長男として大阪に生まれる。
家庭料理、郷土料理の大切さを伝えながら、地域の食生活文化向上をめざし、「仕事づくり、暮らしづくり、町づくり」の食事産業界と自然産業界の中で、家庭教育をコアに、社会貢献型のビジネスのプラットフォーム『食ecoミュージアムJAPAN』町upプロジェクトを推進している。

 健康の基本は身体です。そして、身体を作るのも心を落ち着かせるのも食べ物の中にある栄養素が基本となります。特に東洋医学では季節の食材にその季節に必要な栄養素が含まれていると考えており、その季節の走りの食材を取ることで、身体を準備することが大切と考えられてきました。

 特に秋は収穫の時期であると共に、冬に備えて身体を準備する時期です。そこで、今回は季節の食材を取り入れながら、冬に向けてどのような身体の準備が必要なのかについてお話をしたいと思います。

【プロフィール】
明治国際医療大学鍼灸学部長・教授、同大学院鍼灸学研究科 研究科長・教授
一般社団法人 日本養生普及協会 会長
京都丹波ウェルネスツーリズム推進協議会会長
京都府南丹市文化観光大使
 東洋医学における効果効能の科学的な立証を目指すと共に、同大学付属治療院にて治療にあたる。自身が大病を患った経験から、日常生活の中に健康を取り入れる大切さを知り、季節に応じた生活である養生の啓蒙活動にも積極的に取り組む。2018年より同大学院に養生学の学問的基礎を構築する寄附講座を開講。京都府南丹エリアを中心に養生を基盤とした街づくりに力を入れている。著書に『今日からはじめる養生学』(集英社)などがある。

 それぞれの地域の風土や季節にあった美味しい食材を提供することで人々の健康ライフを支えているのが農業です。この農業にとって、もっとも大事なことの一つは「土づくり」です。しかし、土の中でおこっていることは目で見えないので、「土との対話」(ソイル・コミュニケーション)は簡単ではありません。

 今回は、土壌の中でおこっていることを数字で「見える化」し、土壌中の微生物が元気になる環境を整える処方箋をだすことができるSOFIX(土壌肥沃度指標)という技術とその活用事例をご紹介し、「土との対話」について皆さんと考えたいと思います。

【プロフィール】
ソイル・コミュニケーション合同会社 代表社員
奈良国立大学機構 奈良カレッジズ連携推進センター副センター長 兼 協働推進部門長、奈良女子大学特任教授
雑誌編集者、ソフト会社、立命館大学産学官連携コーディネーター、一般社団法人SOFIX農業推進機構を経て、現職。
私自身も、2018年に前立腺がんの診断を受け、食のところから自然免疫力を高めることの重要さを身をもって痛感した。土壌微生物が活発な健全な土壌からとれた、健康な農産物を多くの人々がいつでも手軽に手に入れ、心身ともに健康で楽しい生活を送れるような社会の仕組みづくりに貢献していきたいと考えている。

 地元農家が土づくりにこだわって生産した季節の野菜を使って、土井敏久さんの季節のお弁当を楽しみます。
 参加者同士で意見交換し、名刺交換して、仲間づくりをします。

■主催 ソイル・コミュニケーション合同会社
■協力 一般社団法人日本養生普及協会
     一般社団法人ライブフーズ
    チャコールクラブ
    369lab.

■参加費: 6,600円(税込み) 「季節のお料理代」を含む

■参加申込方法: 下記のPeatix(推奨)または本HPのフォームから申し込んでください。
 ※申込期限 9月27日(金)
 ※キャンセルも9月27日(金)までにお願いします。それ以降は返金致しかねます。

台風により延期⇒【予告】当社代表が三重短期大学地域連携講座で講義

 テーマは、「持続可能な未来社会の可能性切り開く有機農業や”農”的な市民生活」です。

 農業就業人口の大幅減少・高齢化、農薬・化学肥料の多用による土壌の疲弊、猛暑などの気候変動による農産物の成育不良、農薬・化学肥料・燃料等の高騰などがすすむなかで、プロ農家のなかでも、より良い農産物の生産や地域活性化をめざして有機農業や循環型農業を取り組む動きが強まっています。政府や自治体も「みどりの食料システム戦略」などで、これらの動きをバックアップしています。

 また、農家でない一般市民のなかでも、東日本大震災、コロナ・パンデミック、気候変動、ストレスフルな生活を経験して、「大量生産・大量消費」の持続不可能な社会、ライフスタイルに疑問を持ち、「農的生活」を志向する人々が増えています。

 今回は、そうした動きを、いくつかの具体的事例をもとにして紹介し、それらが持続可能な未来社会へとつながっていく可能性について参加者とともに考えます。

 なお、有機農業を取り組むプロ農家の事例のなかでは、SOFIX(土壌肥沃度指標)技術を活用した事例も紹介しています。

 三重短期大学地域連携講座は、どなたでも参加できます。参加申し込み等は、下記の三重短期大学地域連携センターまでお問い合わせ願います。

 ・演題:持続可能な未来社会の可能性切り開く有機農業や”農”的な市民生活
 ・講師:松田 文雄
     (ソイル・コミュニケーション合同会社代表社員、奈良女子大学特任教授)
 ・日時:2024年8月31日(土) 13時30分~15時00分
 ・場所:三重短期大学 校舎棟4階41番教室
 ・案内:大畑 智史(法経科 教授)

〒514-0112 津市一身田中野157番地
三重短期大学 地域連携センター
(TEL)059-232-2341(FAX)059-232-9647
(Email)232-2341@city.tsu.lg.jp

三重短期大学地域連携講座のページ

水田の生き物の調査から有機農業の面白さ、大切さを伝える~日本有機農業研究会全国大会の基調講演から

 2月17日(土)~18日(日)、「第50回日本有機農業研究会全国大会in愛媛」が愛媛県伊予市のウェルピア伊予で開催され、有機農業に取り組む生産者や消費者、行政関係者、研究者、学生など約200人が全国から集まりました。当社代表の松田も今回初めて、この全国大会に参加しました。

 日本有機農業研究会は、1971年に有機農業の探求、実践、普及啓発、交流などを目的に結成されました。記念すべき50回目の大会となる今回のテーマは、「明日に手渡す生命(いのち)の食べもの」でした。

 大会で私がもっとも印象に残ったのは、「生態系の観察から見えてくる有機農業の面白さを伝える『教育』と『農の技』」というタイトルの基調講演でした。この基調講演は、子どもへの教育の立場から元愛媛大学教育学部准教授の宇高順子先生と、地元の農家で愛媛有機農業研究会会長の長尾正人さんの2人がペアになって話すというユニークな形式でおこなわれました。

ウンカ(水田の害虫)の被害はなぜ起こる?

 宇高先生のお話は、数年前に地域の小学校で行った「田んぼのコメづくり」についての教材と授業の実践の報告でした。

 その当時、地域の水田でイネが大量に枯れてしまう事態が発生したいたことから、
 
 なぜ、イネが枯れてしまうのだろう?
  ↓
 稲の葉や茎から汁を吸って枯らしてしまう害虫「ウンカ」が大量の発生したから
  ↓
 ウンカはどこから来たのだろう?
  ↓
 除草剤を撒いた田んぼでは、いっときウンカはいなくなったけど、あるときから逆に大発生して、イネを一気に枯らしてしまった。同じ時期に、無農薬の田んぼでは、いっときウンカもクモも増えたけれど、秋になるとクモが大きくなり、ウンカが減った。

 という実例を示しながら、なぜ、そうなるのかについて、水田には様々な虫や草などの多様な生態系のピラミッドがあることをしめしながら、次のように説明していきました。

【除草剤を撒いた田んぼ】
 除草剤→草が枯れる→草を食べるただの虫(トビムシ)が減る→ただの虫(トビムシ)を食べる益虫(クモ)が減る→ウンカが増える→イネに被害

【無農薬の田んぼ】
 いろいろな草・いろいろな虫がいる→草を食べるただの虫(トビムシ)や害虫(ウンカ)が増える→ただの虫を食べ益虫(クモ)が増える→クモが大きくなり、ウンカが減る

 こうした授業をしたうえで、農家さんの協力を得て、子どもたちに田んぼの「生き物観察」をさせました。子どもたちは田んぼの生き物の変化について詳細な記録をすることで、自分たちの五感と観察力で生物多様性の重要性について学んでいきました。

農家の側からも「生き物調査」の場を提供

 つづいて、農家の長尾正人さんのお話がありました。

 長尾さんは、実家が農家ですが、他産業で働いていて、Uターン就農し、いまは実家で有機でコメ、小麦、露地野菜などを栽培しています。水田については、ペレット化された米ぬかや深水管理で有機栽培をおこなっています。子どもたちと一緒に、田んぼの生き物調査をおこなっており、55種類の生き物を確認できたということです。こうした生物多様性があることから、ウンカの被害がひどかった2020年でも、長尾さんの水田はウンカの被害を免れることができたということです。

「生き物調査」から生態系、人間と自然との関係、有機農業の面白さを知る

 最後にお二人の基調講演のまとめとして、有機農業生産者から、学校、地域、行政のつながりを作ることの大事さが強調されました。とくに、イネづくりの体験学習の場の提供や学校給食の食材提供などがその良い機会になるということでした。

 また、田んぼを生き物観察の場として提供することで、実際の調査を通じて科学的に生態系のバランスを知ることができ、さらに持続可能な人と自然との関係を知ることができること、なによりも有機農業の面白さ、大切さを伝えることになると強調されていました。

 私たちが、土壌診断のツールとしているSOFIX(土壌肥沃度指標)は、総細菌数やそのエサとなる有機物の量とバランス、最近たちによる窒素やリンの循環を数字で評価しているわけですが、その背景にある、カエルやメダカ、ウンカ、トンボ、スズメ、さまざまな雑草類などの生物多様性にいても見ていく必要があると感じました。

 私は昨年の夏から、NPO法人京都土の塾に参加し、様々な露地野菜の栽培をまじめていますが、今年からは日本人の主食であるお米の栽培にも取り組もうとしています。そのなかで、ぜひ、自分の水田で大人の「生き物調査」を行ってみたいと考えました。

※京都土の塾の松田の水田でのその後の日々の作業と「生き物調査」については、ソイル・コミュニケーション合同会社のFacebookページで共有しています。

5つの分科会

 全国大会では、基調講演のあと、つぎの5つの分科会に分かれての討論が行われました。私は、そのうち、第5分科会に参加しました。

 
 1.GMO+ゲノム編集と有機農業
 2.気候変動と有機農業 対策と技の継承
 3.ゆうき生協と提携 今日から明日へ
 4.学校給食に有機を 教育と生産者の課題
 5.明日の有機農業 愛媛から

自然に戻しても増え続ける果樹

 2日目は、福岡正信自然農園と武智さん原木椎茸の現地見学でした。

 福岡自然農園は、「わら一本の革命」自然農法で有名な福岡正信さんのお孫さんが運営されている農園です。お孫さんはお孫さんなりのやり方で福岡正信さんの自然農法を引き継いでおられました。
 
 かつて、おじいさんの正信さんが約50年かけて育んでこられた果樹園は、いったん自然に戻して、人がすぐには入れないような状態になって20年たっています。普通は、果樹園は人の手が入らなくなると、果樹は朽ち果ててしまうそうですが、福岡さんの果樹は自然に戻してもどんどん増えているそうです。

 武智さんの農園では、原木椎茸を直接収穫させていただき、お昼ご飯として、焼き椎茸、地元の有機野菜たっぷりの獅子鍋、有機のご飯を頂きました。

 学ぶことが多く、また多くの人々とのネットワークができた意義ある2日間でした。

水害で耕作放棄された果樹園復活へ向けて「植樹祭」を開催

 7年前の九州北部大水害によるがけ崩れ等によって農道や圃場が土砂に埋もれて使えなくなり、耕作放棄地となってしまった福岡県朝倉市の柿の果樹園。ここを、農業体験やキャンプなどを楽しめる観光農園として蘇らせようと、昨年夏に地元の原田淳一さんが立ち上がり、ユンボ等を使って自力で土砂を取り除く作業を黙々と続け、昨年末についに整備作業を完了しました。そして、2月11日、約20人の支援者を招いて、この樹園地に新たに桃の木を植える「植樹祭」を開催しました。当社代表の松田も、SOFIX診断士である原田さんに長年のお世話になったご縁から、「植樹祭」に参加させていただきました。その様子を動画も交えて報告します。

見晴らしの良い果樹園

 「植樹祭」では最初に原田さんより、「5段になっている畑のうち、上から1~4段目には桃を約120本、5段目には”太秋(たいしゅう)”という品種の柿を34本植え、下の方の果樹園にはすもも50本を植えたい。きょうは、皆さんに眺めを楽しんでもらうとともに、ここで、こういうことをしたらいいというヒントをもらえるとありがたい。」と開会挨拶がおこなわれました。

開催挨拶でこれからの計画を語る原田淳一さん

 植樹祭がおこなわれた場所は、この果樹園がある小高い山の山頂付近で、見晴らしの良い場所です。眼下に広がる田園風景や向かい側の宮地嶽神社のある山の風景が楽しめます。この山の上まで、ヒアピンカーブが続きますが、舗装された農道がとおっているので、自動車で登ってくることができます。

桃の木をみんなで植樹

 つづいて、原田さんの方から、桃の苗木の植え方について参加者のみなさんに実地でレクチャーが行われました。あらかじめ完熟堆肥が施された穴に苗木を入れて、土をかぶせたうえで、地上から60センチぐらいのところで切断します。こうすることで、苗木がゆっくりと肥料を吸って、新しい枝を付けていきます。根の付近のミミズを食べにやってくるイノシシ対策のために木酢液を埋め込み、新芽を食べにくるシカ対策のため、木のまわりに防虫ネットをはっていきます。農家さんの知恵がつまっています。

桃の植樹の仕方はなかなか興味深い

 参加者のみなさんは、このやり方に従って、それぞれ桃の苗木を植えていきました。みんなの力を合わせて十数本の苗木を植えました。「桃、栗3年、柿8年」というように、3年後、どんな桃の実ができるのか、楽しみです。

体験型で楽しめる観光農園ができそう

 植樹の後、みんなでランチを楽しみました。地元の農家・稲葉秀俊さんが経営するレストラン、Cafe楓(ふう)で作っていただいた豚汁、塩おにぎり、そして稲葉さんが手塩をかけて育てた「あまおう」、石焼き芋などがふるまわれました。植樹作業をしたあと、美しい風景を眺めながら、みんなで頂く食事は格別の美味しさがあります。

美しい風景のなかでみんなで食べる食事は美味しい

 この頂上付近はちょっとした広場になっているので、キャンプをしたり、竹細工などの耕作をしたり、電動キックボードで遊んだりと、いろいろな楽しみ方がありそうです。

 果樹園がある朝倉市は、福岡市から電車で約1時間半のところにあります。都市部に生活する人々が 、桃や柿などの栽培や収穫などの農作業やハイキング、キャンプなどを通して身体を動かし、自然に触れ、美味しいものを食べて、人々と交流し、心身ともにリフレッシュする体験型で楽しめる観光農園ができそうです。

地元にUターンして新たな事業

 この果樹園は、2017年の九州北部豪雨災害の影響によって土砂崩れが何カ所もあり、道路が寸断され、柿の木と雑草、蔦がごちゃごちゃになり、使えない状態となっていました。農道は、公道のため、復旧費用の10分の9は行政が負担することができたそうですが、この果樹園を経営していた高齢の農家さんにとっては残りの10分の1の自己負担が難しく、また、実際の普及作業は難しく、果樹園の復活をあきらめざるをえませんでした。

 この果樹園を復活すべく、原田さんが昨年の夏から、ユンボを使ってまず道路を埋めている土砂を除去し、道路が通れるようにしました。つづいて、果樹園のなかの土砂を除去し、倒れたり、枯れたりした柿の木を伐採し、整備をしてきました。

 「使える状態になるとは思っていたが、実際、最初はどこまでやれるのかわからなかった」と、原田さんはこの半年間の作業をふりかえります。

復旧作業への思いを語る原田さん

 原田さんは、この地元朝倉市の出身ですが、大阪で約34年間、国際物流の仕事をされたのちに、2018年に高齢のご両親が住む朝倉市に戻られました。この果樹然復活を決意してからは、地元の農家さんの仲間に入り、多くのことを教えて頂き、サポートをしてもらいながら、新たな事業を始めています。

 日本の農業の担い手の高齢化がすすみ、地球温暖化による気候変動や激しい風水害などにより、農業をめぐる条件はますます厳しくなっています。全国の農耕地の面積は、1961年の608.6万haから2023年には429.7万haへと約29%も減少しています。

減少する日本の農耕地(グラフは農水省「荒廃農地の現状と対策」2024年1月より引用)

 「荒廃農地」は、2021年時点で全国で25.3万haまで拡大し、そのうちの64%の16.3万haが「再生困難」とされています(2021年「耕地面積調査」、2021年「遊休農地に関する措置の状況に関する調査」)。2020年の「基幹的農業従事者」の平均年齢は、67.8歳。また、65歳以上が主体の農家・農業法人のなかで、「5年以内に農業経営を確保している」のは僅か28%にすぎません(2020年「農業センサス」)。このままいくと、10年もすれば、耕作放棄地が一気に広がるという危惧もあります。耕作放棄地は、耕作放棄地はまわりの農地にも悪影響を与えるのみならず、さらに広がれば日本の食料生産の根幹を危うくしかねません。

日本の荒廃農地(グラフは農水省「荒廃農地の現状と対策」2024年1月より引用)

 このようななかで、原田さんの果樹園復活の取取り組みは、日本の農業を維持するうえで、また、人々の健康で楽しい生活を作り出すうえでも、また、都市部の仕事をリタイアして地方で新たな事業と生き方を創造するうえでも、一つのモデルになりうる取り組みです。

SOFIXによる土壌診断のためのサンプリング

 農業生産にとって、最も重要なことの一つは「土づくり」です。そのため、原田さんとしては、果樹園復活にあたっては、SOFIX(土壌肥沃度指標)による土壌分析を定期的におこなうことを計画されています。そのため、「植樹祭」の参加者の皆さんが帰ってから、原田さんと私で、果樹園の土壌のサンプリングを行いました。 

 サンプリングの場所としては、桃の苗木を植えた果樹園の上段部分と、スモモなどを植える下の部分、そして、原田さんが手本にしようとしている師匠の稲葉さんの桃畑の土壌にしました。まず、目標とする稲葉さんの桃畑の土壌をデータで見える化して、自分の果樹園のデータも分析して、稲葉さんの土壌のデータに近づくように土づくりを行っていく方針です。

 一緒にサンプリングさせていただいた感想として、稲葉さんの土と、まだ復活したばかりの原田さんと土とでは、見た目も触った感じも全然違います。SOFIX(土壌肥沃度指標)では、これらの土壌1g中に何匹の微生物がいるのか、それらの微生物のエサとなる有機物が、どのような量で、どんなバランスであるのか、そして、微生物たちが有機物を分解して、肥料成分を作り出していく活動がどのようになっているかを、数字やグラフで示すことができます。そこから、微生物の数を増やし、その活動を元気にして、植物に肥料成分を安定的に供給できる状態にしていくための「土づくり」の指針も明らかにできます。

 まずは、サンプリングした土壌からどんな分析データが出てきたら、そのデータをもとに原田さんとディスカッションしたいと考えています。

農業は健康な地域づくりに貢献できるか――第1回地域健康医療コミュニティ研究会に参加して

 1月28日(日)、「第1回地域健康医療コミュニティ研究会」が大阪府吹田市の明治東洋医学院専門学校で開催されました。この研究会は、明治国際医療大学の伊藤和憲教授が呼びかけて開催されたものです。この研究は、地域の健康や医療を支えているのは、医師や看護師だけでなく、柔道整復師や鍼灸師、さらにはスポーツジムや食堂、商店などさまざまな人々であり、業種によって健康へのアプローチはちがうけれど、共通した概念や知識をもって互いに情報共有し、それぞれの特徴を生かした有機的な連携を果たしていくことが望ましいという視点から開催されました。当社代表の松田も、お声がけをいただき、有機農業や農的な生活を通じて、健康な地域づくりに貢献していきたいーーという思いからこの研究会に参加してきました。

 ※当社は11月11日に開催された一般社団法人養生普及協会の学術集会にも参加しています。

第1回地域医療コミュニティ研究会の抄録集

21世紀は「養生医学」(予防医学、未病医学)へ転換の時代

 研究会では、冒頭に、明治国際医療大学の前学長である矢野忠先生より、「地域の健康と医療の未来~21世紀の養生医学の構築を目指して」と題する特別講演がおこなわれました。

 矢野先生は、21世紀の少子高齢化などの人口変容にともなって疾病構造が大きく変化していると指摘しました。それは、生活習慣病や高齢疾患から、社会との不適合による疾病ーーこころの病、ストレス病へと変化しつつあることです。これらの疾病は治りにくいことから、医療は病気保障(治療医学)だけでなく、健康保障の医療(予防医学、未病医学)=「養生医学」への転換が迫られているとしています。

 矢野先生は、「養生医学」の目指すところは、「いきいきと生きること、Well Beingである」と述べ、そこには「養形」=身体の養生と「養神(養心)」=精神の養生があり、両者によって真の健康がもたらされると解説しました。また、こうした養生医療によって、高騰する医療費を抑えることにもつながると強調しました。

 矢野先生は、最後にこうした「養生医療」を実現するためは、地域の様々な人々がむすびついて「ヘルシーコミュニティー」を作ることが不可欠であると強調されました。そのため、鍼灸師が従来のように鍼灸院で患者を「待つ」だけでなく、積極的に地域に飛び込んで「ヘルシーコミュニティ」づくりに積極的にかかわっていくことが重要だと強調して講演を終えました。

「健康医療コミュニティ」づくりの事例を紹介

 研究会では、つづいて「シンポジウム1」として、地域での「健康医療コミュニティ」づくりの事例として、京都府南丹市、北海道恵庭市や大阪の繊維会社などの事例が報告されました。

 「シンポジウム2」では、「地域の疼痛患者を街全体で支える」というテーマで、医療従事者の症例報告と患者自身の報告がありました。

有機農業や農的な生活を通じた健康な地域づくりの可能性を感じる

 また、最後の一般報告では、地域での健康・医療コミュニティづくりの試みとして、スポーツや農業での実践も報告されました。とくに、農業については、農作業自身が身体を鍛え、精神を安定化させる「アグリスポーツ」としての役割を持っていることに着目し、明治国際医療大学のキャンパスのなかに農地を設置し、参加者の肉体的な健康状態についてはウエラブウォッチで、不安、自己肯定感など精神的な健康状態についてはアンケートで調査する取り組みが報告されていました。また、南丹市美山町の「森の鍼灸院」で遊休農地を利用したメディカルハーブの栽培へのチャレンジも報告されていました。

 有機農業や農的な生活を通じて、健康な地域づくりに貢献するという当社の考え友通じるものがあり、勇気づけられました。「農業×養生」による健康な地域づくりへの取り組みは始まったばかりですが、その可能性を感じた研究会でした。

 研究会終了後の懇親会では、参加した皆様方と親しく交流させていただきました。

土づくりから健康で楽しい生活を送れる社会の実現へ――2024年 新年のご挨拶

ソイル・コミュニケーション合同会社
代表社員 松田文雄

 皆様、新年おめでとうございます。

 穏やかな正月を突然断ち切るようにおこった能登半島地震。犠牲になられた方にお悔やみを申し上げます。被災された皆様にお見舞いを申し上げるとともに、一刻も早い復興を祈念しております。

ソイル・コミュニケーションという社名に込めた思い

 ソイル・コミュニケーション合同会社は、当社代表・松田の個人事業を法人化し、昨年(2023年)3月に設立いたしました。

 ソイル・コミュニケーションという社名に込めた思いは、地球温暖化や担い手の高齢化などにより日本の農業が危機的な状況におかれているもとで、農業にもっとも重要な「土づくり」を基本にした3つの対話(コミュニケーション)ーー①土壌と人間との対話、②農業生産者と生活者との対話、③過去・現在・未来との対話ーーを通じて、持続可能な社会を実現することです。そのめざすところは、だれもが健康で楽しい生活を送れる社会です。

▶【詳細】ソイル・コミュニケーションの3つの対話

理念実現へむけて第一歩

 昨年は、非常にゆっくりとした歩みではありましたが、この理念の実現へむけた第一歩を歩み始めました。

 「1.土壌と人間との対話」に関しては、SOFIX(土壌肥沃度指標)技術を活用して、各地の農家さんの土壌の分析、分析結果の解説、土壌の処方箋の作成などのお手伝いをさせていただきました。

 6月26日に開催された第13回SOFIX実践事例研究会(一般社団法人SOFIX農業推進機構主催)では、一昨年来、福岡のトマト農家さんに伴走して取り組んだトマト青枯病低減の事例について発表させていただきました。

 「2.農業生産者と生活者との対話」に関しては、福岡県朝倉市で、高齢化と担い手不足、九州北部豪雨災害の影響で耕作放棄された果樹園を観光果樹園として復活するプロジェクトを支援させていただきました。

 11月11日には一般社団法人日本養生普及協会学術集会に参加し、地域全体で、健康的な生活を送れるようなコミュニティをつくること、そのなかには、旬の食べ物を食べ、季節に根差した祭りやイベントなどを通して、地域の人々がつながっていくことが重要であることを学びました。そのようなコミュニティづくりのため、「土づくり」の側面から参画させていただく方向で日本養生普及協会様とも意見交換をさせて頂いています。

 「3.過去・現在・未来との対話」では、神戸学院大学が取り組んだ「土壌中の炭素貯留による低炭素社会の構築のための学校校庭の芝生化と有機農業の推進」という研究プロジェクトに参画させていただきました。このプロジェクトでは、学校の校庭の芝生化によって炭素貯留がすすむことについての有意なデータを得ることができました。

「農的生活」を楽しむ人々も持続可能な農業を支える

 以上のソイル・コミュニケーション合同会社の仕事とは別に、私は、昨年5月から個人の立場でNPO法人京都土の塾に参加させていただきました。

 京都土の塾は、私の自宅の近くの京都市西京区大原野石作地区の耕作放棄地約3haを整備して、農薬、化学肥料はもちろん農業機械さえ使わず、ツルハシ、スコップ、鍬、鋤等を使い、自ら体を張って土と向きあい、さまざまな農産物を創っています。

 その理念は、経済効率優先の現代において、お金さえあればなんでも買え、人まかせ、季節無視、産地無視の「食」が当たり前のようになっている社会のありかたに疑問を呈し、「楽を求めるのではなく、他の生きものと対等な”素手”で、自分たちの食べ物を作り、自然界の命を”生命の糧”としていただく」ことです。

大根の間引き作業

 私はこの塾に参加して、鍬やスコップで額に汗をしながら育てた季節の野菜の美味しさ、ありがたさに感動しています。11月以降は、スーパーなどで一切野菜を買う必要はなく、畑で採れたての野菜で日々の食事を作っています。こんなにワクワクした経験ははじめてです。

 京都土の塾には、こうした「農的な生活」に共感される多くの方々が参加しています。こうした動きは、プロの農家さん、農業法人とならんで、今後の日本の農業を支える重要なファクターにあるのではないかと感じました。

多くの皆様のご支援に感謝いたします

 少し脱線しましたが、以上のように、亀のような歩みでありますが、何とか前進できたきたのも、数多くの方々のご支援のおかげです。改めて御礼を申し上げます。

 2024年も、ソイル・コミュニケーションが掲げる3つの対話を忘れず、活動していきたいと考えます。

 皆様のご指導、ご鞭撻をよろしくお願い致します。