季節の料理、養生、土づくり、その先に社会があることを実感ー「土と水と養生で暮らすまちづくり」のイベントに34人が参加

 「土と水と養生で暮らすまちづくり—季節の家庭料理と郷土料理から考える会」が9月30日(月)18:30~ コミュニティキッチンDAIDOKORO(京都信用金庫の共創施設QUESTION8階)で開催され、34人の方々に参加いただきました(主催者・スタッフを含めると45人)。季節の料理を楽しみながら、土と養生、お料理、農業や健康のあり方、環境問題、まちづくり、あらたなビジネスの可能性について語りあう場として当社が企画し、一般社団法人日本養生普及協会様一般社団法人ライブフーズ様の協力のもとで開催されました。

 第一部「農と養生、まちづくりをお料理から考えるトークセッション」では冒頭、料理研究家・土井勝氏のご長男であり、お料理プロデューサーの土井敏久氏が、鰹節と昆布をベースに家庭でも簡単に作れる「二番だし」を参加者の皆さんに飲んでもらい、その美味しさを実感してもらいながら、「二番だし」のつくり方を実演しました。そして、「二番だし」を手作りすることを通して、人と人との対話をしていくことの重要性をつたえました。 

「二番だし」のつくり方を実演する土井敏久さんと伊藤佳世さん
「二番だし」を飲んでみる

続いて、明治国際医療大学・伊藤和憲教授より、東洋医学の「養生」という考え方では、季節の食材にその季節に必要な栄養素が含まれていると考えており、その季節の走りの食材を取ることで、身体を準備することが大切と考えられてきたことが解説され、この日の料理に料理に含まれる素材が、冬に備えて身体を準備するものになっていることが強調されました。そして、今日の病気には社会的要因も大きいとして、「養生」を基本とした地域社会づくりをとして、貧富の格差を含めた社会問題の解決をめざしていく構想がしめされました。

「食と養生」についてお話する伊藤和憲明治国際医療大学教授

 最後に、当社代表の松田より、季節の旬の野菜をはぐくんでいく上で、土壌中の有機物の量やバランス、微生物が重要であることが解説され、土壌の健康診断の指標としてのSOFIX(土壌肥沃度指標)の概要やその事例などがが紹介されました。そして、「土づくり」にこだわった農業と旬の農産物を基本として、人々が心身ともに健康な生活を送れる地域づくり、「土と水と養生で暮らすまちづくり」をよびかけました。

「健康ライフを支える土壌づくり」についてお話する当社代表・松田文雄

 第2部「季節の料理を楽しむ」では、土井敏久さんプロデュースの季節のお料理を楽しみながら、参加者同士で和やかに意見交換しました。

 『実りの秋!養生美健のお献立』

⚪︎秋刀魚の柚子香焼き
⚪︎栗と豚肉の煮物
⚪︎海老のらくがん
⚪︎菊菜としめじの煮浸し
⚪︎里芋のみそ田楽
⚪︎ぶどうのおろし和え
⚪︎新米ご飯
⚪︎お吸い物

季実りの秋!養生美健のお献立
参加者同士で和やかに交流

養生や健康を作るのは個人だけでなく、社会全体で取り組むことという考えに共感–参加者の感想から

 参加者へのアンケートでは多くの感想が寄せられました。その一部をご紹介します。
 参加いただいたみなさんに改めてお礼申し上げます。

〇恥ずかしながら若い頃に養生を学んだときは表面のさらに表層だけで「季節のものを食べて体を養おう」くらいしか理解できてなかったのですが、年の重ねた今、今回のお話を聞いて、「養生は自分という体、体は肉体であり、その先に社会、社会の取り組みあり、それが世界を作っていくこと」ということが何となく体感として分かったような気がします。一朝一夕ではなく、日々の取り組みとして「出汁のとる」=世界を支えていく、ということを実践していきたいと思います。ありがとうございました。

〇有意義な時間を過ごさせていただきました。ありがとうございました。家庭料理は和やかなコミュニケーションの潤滑油になるのだなと感じました。養生や健康を作るのは個人だけでなく、町や社会全体で取り組むことという考えに共感します。ありがとうございました。感想から

〇統合医療で世界の伝統医療を学んでいますが、日本人には日本人に合った養生法があると再認識できました。伊藤先生がおっしゃっていた現代版養生論を、看護師の立場で普及していきたいです。子どもが小さな頃は出汁にこだわって育児してきましたが、さいきん出汁をひかない重ね煮にハマって出汁のうまみを忘れていました。土井先生の二番だしをマスターしたいと思います。松田先生の土と水と養生のご講義、食の根底にある自然界との調和や、土壌ミネラルの重要性、この認識を農家さんや農業関係のみなさんと共有できたことで、真の健康や養生を理解することができ

〇養生の深い意義が理解できました。

〇養生、日本の節句、もう一度見直す必要があると思いました。食材の組み合わせ方は非常に勉強になりました。

〇今回のように美味しい食事があると、実践に繋がるので有難いです。

〇季節ごとに参加したい

〇とても勢いを感じました。美味しいお食事も頂き心豊かになりました。出汁に関して難しい事は考えず昆布出汁は取っていましたが、二番出汁の取り方をお聞きして作ってみようと思います。

〇家庭料理に凝縮された暮らしの知恵、土づくりの大切さ、季節への感性、改めて体感いたしました。

〇地域の方々との交流を含めたその地ならではの多様な展開を期待しております。

、家族に食事を提供しております。手作りを心がけてますが、出汁は顆粒にたよってました。こうしなければならないではない、ゆるい2番出汁は、いろんな可能性があると感じました。ありがとうございます。

〇家族に食事を提供しております。手作りを心がけてますが、出汁は顆粒にたよってました。こうしなければならないではない、ゆるい2番出汁は、いろんな可能性があると感じました。ありがとうございます。

〇高齢者の多くは、食事作りがしんどいと言われます。高齢者の栄養はとても重要で、高齢者に焦点を当てたレシピ作り及びまちづくりに関心があります。


SOFIXを活用した果樹園復活プロジェクト(福岡県朝倉市)のロケ撮影を実施

ソイル・コミュニケーション合同会社は、かねてより福岡県朝倉市で、2014年前の九州北部大水害で使えなくなった果樹園を再生するプロジェクトのお手伝いをしています。土砂崩れなどで荒廃した土地を整地し、流亡した有機物や肥料成分を補い、新たに桃やスモモの苗木を植えるにあたり、SOFIX(土壌肥沃度指標)による土壌診断を活用して頂いています。このプロジェクトを取り組んでいる原田淳一さんは、再生した果樹園を、将来的にはお客さんが桃やすももだけでなく、四季の旬の食べ物や、収穫体験、キャンプなどを楽しみながら心身ともに健康となる「養生」のコンセプトとした観光農園にすることを構想されています。

 このたび当社は、こうしたプロジェクトを広く社会に発信していくためのプロモーションビデオを作成するため、9月14日〜15日、福岡県朝倉市の原田さんの果樹園でロケ撮影を行いました。

 協力して頂いたのは、369(ミロク)ラボの藤添尚子さんです。藤添さんに本プロジェクトのコンセプトをご理解いただいた上で、藤添さんのディレクションのもとで、原田さん、当社代表の松田の3人で果樹園中を歩き回り、ああでもない、こうでもないと議論しつつ、撮影しました。

 今回のプロモーションビデオの作成は、9月30日に開催する「土と水と養生でくらすまちづくりー季節の家庭料理と郷土料理から考える会」のイベントとも連動しており、「土と水と養生」を基本としながら、様々な方と連携して、まちづくりや地方創生、地方から新たな農業やビジネルを生み出していくという方向で取り組んでいます。

農業は健康な地域づくりに貢献できるか――第1回地域健康医療コミュニティ研究会に参加して

 1月28日(日)、「第1回地域健康医療コミュニティ研究会」が大阪府吹田市の明治東洋医学院専門学校で開催されました。この研究会は、明治国際医療大学の伊藤和憲教授が呼びかけて開催されたものです。この研究は、地域の健康や医療を支えているのは、医師や看護師だけでなく、柔道整復師や鍼灸師、さらにはスポーツジムや食堂、商店などさまざまな人々であり、業種によって健康へのアプローチはちがうけれど、共通した概念や知識をもって互いに情報共有し、それぞれの特徴を生かした有機的な連携を果たしていくことが望ましいという視点から開催されました。当社代表の松田も、お声がけをいただき、有機農業や農的な生活を通じて、健康な地域づくりに貢献していきたいーーという思いからこの研究会に参加してきました。

 ※当社は11月11日に開催された一般社団法人養生普及協会の学術集会にも参加しています。

第1回地域医療コミュニティ研究会の抄録集

21世紀は「養生医学」(予防医学、未病医学)へ転換の時代

 研究会では、冒頭に、明治国際医療大学の前学長である矢野忠先生より、「地域の健康と医療の未来~21世紀の養生医学の構築を目指して」と題する特別講演がおこなわれました。

 矢野先生は、21世紀の少子高齢化などの人口変容にともなって疾病構造が大きく変化していると指摘しました。それは、生活習慣病や高齢疾患から、社会との不適合による疾病ーーこころの病、ストレス病へと変化しつつあることです。これらの疾病は治りにくいことから、医療は病気保障(治療医学)だけでなく、健康保障の医療(予防医学、未病医学)=「養生医学」への転換が迫られているとしています。

 矢野先生は、「養生医学」の目指すところは、「いきいきと生きること、Well Beingである」と述べ、そこには「養形」=身体の養生と「養神(養心)」=精神の養生があり、両者によって真の健康がもたらされると解説しました。また、こうした養生医療によって、高騰する医療費を抑えることにもつながると強調しました。

 矢野先生は、最後にこうした「養生医療」を実現するためは、地域の様々な人々がむすびついて「ヘルシーコミュニティー」を作ることが不可欠であると強調されました。そのため、鍼灸師が従来のように鍼灸院で患者を「待つ」だけでなく、積極的に地域に飛び込んで「ヘルシーコミュニティ」づくりに積極的にかかわっていくことが重要だと強調して講演を終えました。

「健康医療コミュニティ」づくりの事例を紹介

 研究会では、つづいて「シンポジウム1」として、地域での「健康医療コミュニティ」づくりの事例として、京都府南丹市、北海道恵庭市や大阪の繊維会社などの事例が報告されました。

 「シンポジウム2」では、「地域の疼痛患者を街全体で支える」というテーマで、医療従事者の症例報告と患者自身の報告がありました。

有機農業や農的な生活を通じた健康な地域づくりの可能性を感じる

 また、最後の一般報告では、地域での健康・医療コミュニティづくりの試みとして、スポーツや農業での実践も報告されました。とくに、農業については、農作業自身が身体を鍛え、精神を安定化させる「アグリスポーツ」としての役割を持っていることに着目し、明治国際医療大学のキャンパスのなかに農地を設置し、参加者の肉体的な健康状態についてはウエラブウォッチで、不安、自己肯定感など精神的な健康状態についてはアンケートで調査する取り組みが報告されていました。また、南丹市美山町の「森の鍼灸院」で遊休農地を利用したメディカルハーブの栽培へのチャレンジも報告されていました。

 有機農業や農的な生活を通じて、健康な地域づくりに貢献するという当社の考え友通じるものがあり、勇気づけられました。「農業×養生」による健康な地域づくりへの取り組みは始まったばかりですが、その可能性を感じた研究会でした。

 研究会終了後の懇親会では、参加した皆様方と親しく交流させていただきました。

有機農業と東洋医学に共通する原理ーー日本養生普及協会の学術集会に参加して

 11月11日の午後、一般社団法人養生普及協会の学術集会にオンラインで参加しました。

 養生普及協会は、東洋医学の「養生」という考え方を現代に活かすことを目的に結成され、当社代表の松田も会員になっています。

 大変興味深い報告が沢山ありましたが、養生普及協会の会長であり、明治国際医療大学の鍼灸学部教授・学部長である伊藤和憲先生のお話がとくに興味深かったです。

 伊藤先生によれば、健康とは、肉体的・精神的だけでなく、社会的にも満たされたものであるべきだと言われています。

 医療は最初は、寿命を延ばすことを目的として、そのために様々な治療やリハビリなどが発展してきました。

 これによって寿命は延びましたが、最後の十数年は寝たきりなど不健康な状態が続くようになったので、次は「健康寿命」が追求されるようになりました。それもいずれ達成されるでしょう。

 その次に今、追求すべきことは、Well Beig ーー 亡くなる直前まで、健康で幸せに暮らせること、自分らしく、自分の価値観で楽しく生きられることです。昔から言われている「ピンピンコロリ」が課題になってきます。

 そのためには、病気にならない生活習慣を身につけていくこと。それが東洋医学で長年培われてきた「養生」だということです。

 ただ、この「養生」は、一人だけでできるものではなく、社会全体、地域全体が良くなることと結びつかないとなかなか実現できないということです。 経済格差が広がれば、健康的な生活習慣を送れない人々が増えるのは、今の現実をみればわかることです。

 そのため、地域全体で、健康的な生活を送れるようなコミュニティをつくること、そのなかには、旬の食べ物を食べ、季節に根差した祭りやイベントなどを通して、地域の人々がつながっていくことが重要となります。また、そうしたコミュニティを通して、地域の農業や観光業などの産業を活性化して、地域を豊かにし、人々の収入が増えることも不可欠です。さらに、こうした養生生活を送ることで、どれだけ健康が増進しているかのデータをとり、蓄積し、ビッグデータでしっかり検証していくこと。こうしたことを養生普及協会では考えておられるということです。

 有機農業と東洋医学に共通する原理があります。それは、病害が発生すれば農薬を使い、病気になればその症状を抑える薬を処方するという対処療法ではなく、農耕地や人間の心身の全体を見て、農耕地の「地力」や人間の「免疫力」を高めることを通じて、病気の根本原因を取り除くことです。

 ソイル・コミュニケーション合同会社は、SOFIX(土壌肥沃度指標)技術を活用し、「土づくり」から有機農業や循環型型の地域社会をつくっていくことを目指しています。この事業も、東洋医学や地域のコミュニティづくりと密接に関連したものです。 まだまだ、当社も非力ですが、養生普及協会さんとも連携を深めていきたいと考えているところです。