農業は健康な地域づくりに貢献できるか――第1回地域健康医療コミュニティ研究会に参加して

 1月28日(日)、「第1回地域健康医療コミュニティ研究会」が大阪府吹田市の明治東洋医学院専門学校で開催されました。この研究会は、明治国際医療大学の伊藤和憲教授が呼びかけて開催されたものです。この研究は、地域の健康や医療を支えているのは、医師や看護師だけでなく、柔道整復師や鍼灸師、さらにはスポーツジムや食堂、商店などさまざまな人々であり、業種によって健康へのアプローチはちがうけれど、共通した概念や知識をもって互いに情報共有し、それぞれの特徴を生かした有機的な連携を果たしていくことが望ましいという視点から開催されました。当社代表の松田も、お声がけをいただき、有機農業や農的な生活を通じて、健康な地域づくりに貢献していきたいーーという思いからこの研究会に参加してきました。

 ※当社は11月11日に開催された一般社団法人養生普及協会の学術集会にも参加しています。

第1回地域医療コミュニティ研究会の抄録集

21世紀は「養生医学」(予防医学、未病医学)へ転換の時代

 研究会では、冒頭に、明治国際医療大学の前学長である矢野忠先生より、「地域の健康と医療の未来~21世紀の養生医学の構築を目指して」と題する特別講演がおこなわれました。

 矢野先生は、21世紀の少子高齢化などの人口変容にともなって疾病構造が大きく変化していると指摘しました。それは、生活習慣病や高齢疾患から、社会との不適合による疾病ーーこころの病、ストレス病へと変化しつつあることです。これらの疾病は治りにくいことから、医療は病気保障(治療医学)だけでなく、健康保障の医療(予防医学、未病医学)=「養生医学」への転換が迫られているとしています。

 矢野先生は、「養生医学」の目指すところは、「いきいきと生きること、Well Beingである」と述べ、そこには「養形」=身体の養生と「養神(養心)」=精神の養生があり、両者によって真の健康がもたらされると解説しました。また、こうした養生医療によって、高騰する医療費を抑えることにもつながると強調しました。

 矢野先生は、最後にこうした「養生医療」を実現するためは、地域の様々な人々がむすびついて「ヘルシーコミュニティー」を作ることが不可欠であると強調されました。そのため、鍼灸師が従来のように鍼灸院で患者を「待つ」だけでなく、積極的に地域に飛び込んで「ヘルシーコミュニティ」づくりに積極的にかかわっていくことが重要だと強調して講演を終えました。

「健康医療コミュニティ」づくりの事例を紹介

 研究会では、つづいて「シンポジウム1」として、地域での「健康医療コミュニティ」づくりの事例として、京都府南丹市、北海道恵庭市や大阪の繊維会社などの事例が報告されました。

 「シンポジウム2」では、「地域の疼痛患者を街全体で支える」というテーマで、医療従事者の症例報告と患者自身の報告がありました。

有機農業や農的な生活を通じた健康な地域づくりの可能性を感じる

 また、最後の一般報告では、地域での健康・医療コミュニティづくりの試みとして、スポーツや農業での実践も報告されました。とくに、農業については、農作業自身が身体を鍛え、精神を安定化させる「アグリスポーツ」としての役割を持っていることに着目し、明治国際医療大学のキャンパスのなかに農地を設置し、参加者の肉体的な健康状態についてはウエラブウォッチで、不安、自己肯定感など精神的な健康状態についてはアンケートで調査する取り組みが報告されていました。また、南丹市美山町の「森の鍼灸院」で遊休農地を利用したメディカルハーブの栽培へのチャレンジも報告されていました。

 有機農業や農的な生活を通じて、健康な地域づくりに貢献するという当社の考え友通じるものがあり、勇気づけられました。「農業×養生」による健康な地域づくりへの取り組みは始まったばかりですが、その可能性を感じた研究会でした。

 研究会終了後の懇親会では、参加した皆様方と親しく交流させていただきました。