奈良女子大学の「未来共創コーディネート演習」で講義

 6月14日、奈良女子大学の「カーボン・ニュートラル」に関する授業で、ソイル・コミュニケーション合同会社代表であり、同大学の特任教授でもある松田文雄が話題提供をさせて頂きました。
 
 奈良女子大学では、学部を横断してカーボン・ニュートラルに関する科目を体系的に学べるプログラムが開講されています。それは、グローバルな環境問題の解決へむけて、地域の課題をとらえ、新たな価値創造をになえる人材の基礎力を養成することを目標としています。今回、講義したのは、こうしたプログラムのなかの「未来共創コーディネート演習」という科目の一コマでした。テーマは、「カーボン・ニュートラルへむけたコーディネート」でした。

 講義では、まず最初に「社会の各分野で活躍するコーディネーター」として、ファッション・コーディネーター、ブライダル・コーディネーター、地域教育コーディネーター、産学官連携コーディネーターなどを取り上げ、それぞれの定義、役割、求めらえるスキルなどを紹介しました。

 そのうえで、産学官連携の事例として、現在、ソイル・コミュニケーション合同会社が取り組んでいる、有機農業と東洋医学の「養生」をかけわせて地域を活性化する取り組み、その具体的事例として福岡県での「果樹園復活プロジェクト」などを紹介しました。

 そして、気候変動が地域にもたらしている具体的な社会的問題を顕在化させ、その解決へ向けて様々な人々を結び付ける「カーボン・ニュートラル・コーディネーター」という職種があったとしたら、どんなスキルが求められているかーーを考えてみようと提案し、短い時間でしたが学生さんたちにグループディスカッションをしてもらいました。各グループからの発表では非常に鋭い意見も多数出されていました。

 最後に、「カーボン・ニュートラル・コーディネーターに求めれるスキル」として現時点での松田が考えている仮説として、①地球環境問題から生じる社会問題に心を痛め、その解決のために自分の役割を果たしたいと考える使命感、②自分の専門分野を持ちつつ、他の分野の専門知識をも学び、全体を俯瞰する力。総合知、③地域の社会のなかでの問題・課題を発見、整理し、「見える化」する力、④異なる立場にある人々の意見や見方を傾聴し、共通する目標を設定する力、⑤目標達成のための具体的なプランニングとPDCAサイクル、⑥想定外のことから可能性を見出すセレンディピティを楽しむーーなどをあげさせてもらいました。

有機農業と東洋医学に共通する原理ーー日本養生普及協会の学術集会に参加して

 11月11日の午後、一般社団法人養生普及協会の学術集会にオンラインで参加しました。

 養生普及協会は、東洋医学の「養生」という考え方を現代に活かすことを目的に結成され、当社代表の松田も会員になっています。

 大変興味深い報告が沢山ありましたが、養生普及協会の会長であり、明治国際医療大学の鍼灸学部教授・学部長である伊藤和憲先生のお話がとくに興味深かったです。

 伊藤先生によれば、健康とは、肉体的・精神的だけでなく、社会的にも満たされたものであるべきだと言われています。

 医療は最初は、寿命を延ばすことを目的として、そのために様々な治療やリハビリなどが発展してきました。

 これによって寿命は延びましたが、最後の十数年は寝たきりなど不健康な状態が続くようになったので、次は「健康寿命」が追求されるようになりました。それもいずれ達成されるでしょう。

 その次に今、追求すべきことは、Well Beig ーー 亡くなる直前まで、健康で幸せに暮らせること、自分らしく、自分の価値観で楽しく生きられることです。昔から言われている「ピンピンコロリ」が課題になってきます。

 そのためには、病気にならない生活習慣を身につけていくこと。それが東洋医学で長年培われてきた「養生」だということです。

 ただ、この「養生」は、一人だけでできるものではなく、社会全体、地域全体が良くなることと結びつかないとなかなか実現できないということです。 経済格差が広がれば、健康的な生活習慣を送れない人々が増えるのは、今の現実をみればわかることです。

 そのため、地域全体で、健康的な生活を送れるようなコミュニティをつくること、そのなかには、旬の食べ物を食べ、季節に根差した祭りやイベントなどを通して、地域の人々がつながっていくことが重要となります。また、そうしたコミュニティを通して、地域の農業や観光業などの産業を活性化して、地域を豊かにし、人々の収入が増えることも不可欠です。さらに、こうした養生生活を送ることで、どれだけ健康が増進しているかのデータをとり、蓄積し、ビッグデータでしっかり検証していくこと。こうしたことを養生普及協会では考えておられるということです。

 有機農業と東洋医学に共通する原理があります。それは、病害が発生すれば農薬を使い、病気になればその症状を抑える薬を処方するという対処療法ではなく、農耕地や人間の心身の全体を見て、農耕地の「地力」や人間の「免疫力」を高めることを通じて、病気の根本原因を取り除くことです。

 ソイル・コミュニケーション合同会社は、SOFIX(土壌肥沃度指標)技術を活用し、「土づくり」から有機農業や循環型型の地域社会をつくっていくことを目指しています。この事業も、東洋医学や地域のコミュニティづくりと密接に関連したものです。 まだまだ、当社も非力ですが、養生普及協会さんとも連携を深めていきたいと考えているところです。