学校の校庭の芝生化による炭素貯留の効果を学術論文として発表—神戸学院大学の研究チームに当社も参加

 神戸学院大学の現代社会学部の菊川裕幸講師を中心に当社も参加する研究チームがまとめた「学校校庭の芝生化による炭素貯留の効果」についての学術論文が国際学会誌「International Turfgrass Society Research Journal(国際芝生協会研究ジャーナル)」に掲載されることが決まりました。菊川講師らは7月12日から16日まで、長野県軽井沢町で開催される国際芝草研究会議2025(International Turfgrass Research Conference 2025、略称ITRC2025)でポスター発表を行います。

 この研究チームは、菊川講師のほか、同大学の渡会英明客員教授、江田英里香教授と当社代表の松田文雄(奈良女子大学教授を兼任)で構成しています。

 研究は2022年よりアーバンイノベーション神戸による助成を受けて実施。2022年から2023年にかけて兵庫県神戸市内で校庭芝生化に取り組んでいる8カ所の小学校を対象に、芝地および裸地の土壌を採取し、炭素貯留量の測定を行いました。

 また、芝生化された経過年数や土壌の有機化の状況も調査し、年次間の変動が明らかになるようアンケート調査を試みました。その結果、校庭を芝生化することで裸地よりも全炭素量は大幅に増加することが分かり、校庭芝生地の年間炭素貯留量も合わせて推定することができました。このことから、学校校庭の芝生化には炭素貯留の効果が一定あることを明らかにしました。

 菊川講師は「国際芝草研究会議での発表を経て、さらに研究を発展させ、神戸市内外への学校校庭芝生化の推進に寄与したいと考えています」と話しています。

 学校の校庭の芝生化の効能としては、これまで子供たちへの教育効果、大気の浄化・高温化防止、砂塵防止など環境効果、学校と地域とのコミュニティ効果などが挙げられてきました。これに加えて、校庭の芝生化による土壌への炭素貯留があれば、2050年のカーボンニュートラルの目標達成へ向けて、温室効果ガスの吸収源の一つとしても貢献することになります。当社は、土壌診断の技術を活用して、引き続き神戸市以外の地域の学校校庭や公園での芝生の炭素貯留の効果についてもさらに実証実験を進めていく計画です。ご興味のある方はお問い合わせください。

学校校庭の芝生化による炭素貯留効果を検証

 11月1日(水)、神戸学院大学で、「土壌中の炭素貯留による低炭素社会の構築のための学校校庭の芝生化と有機農業の推進」というテーマの研究プロジェクトの第2回目の会議が開催され、当社も参加しました。

 この研究は、温室効果ガスの低減の方策の一つとして、土壌への炭素貯留が課題となるなかで、「学校の校庭の芝生化」と「農地への有機肥料の施用」によって土壌への炭素貯留量を増やすことと、それを数字で「見える化」することを目標としています。研究代表者は、神戸学院大学の現代社会学部の菊川裕幸講師で、神戸市の「大学発アーバンイノベーション神戸 研究費助成」事業の支援を受けて、2022~2023年度に取り組まれています。

 2022年度の取り組みでは、学校給食の残渣や地域の有機資源である竹チップを使った堆肥製造の実験をおこないました。

 参考:肥料コスト低減につながる堆肥を使うには品質の見極めが大事

 2023年度は、学校の校庭の芝生化による炭素貯留効果を実測するための土壌分析等を行いました。また、前年度に作成した堆肥による農産物の栽培実験をおこないました。

 当社は、この実験のなかで、堆肥のMQI(堆肥品質指標)分析3項目(総細菌数・全炭素量・全窒素量)分析、土壌の3項目分析と分析データの評価などでをおこないました。

 11月1日の会議では、この間の学校の校庭の土壌の分析結果をどうみていくかについて活発な議論を交わしました。

 この研究プロジェクトは最終的には、神戸市の「地球温暖化防止実行計画」で打ち出されている二酸化炭素吸収源対策を実現することを目指しています。当社も、このプロジェクトに参加して、低炭素社会の実現に貢献できればと考えています。

芝生が張られた場所での土壌サンプリング