11月4日(土)、ひとまち交流館京都(京都市下京区)で、亀岡市の有機農業の取り組みについての講演会と映画『種とゲノム編集の話』の上映会が開催されました。主催は、京都種子(タネ)と食の安全を守る会準備会で、約40人が参加しました。
主催者あいさつの後、京都府内でいち早く「オーガニック・ビレッジ宣言」を発して、精力的に有機農業を推進している亀岡市の取り組みについて、亀岡市役所の農林振興課副課長である荒美大作さんから、要旨つぎのような講演がありました。
①亀岡市の概要
亀岡市は、京都市の西隣にあり、人口は約87,000人。湯の花温泉、保津川下り、嵯峨野トロッコ列車などの観光資源があり、最近ではサンガスタジアムが開設されている。
農業の特徴としては、農業経営体が1,487(うち法人30)、経営耕地面積1,641ha。農業出荷額は62億円(2021年)で、これまでは米や野菜が多かったが、最近は鶏類の伸びが大きい。
有機農業への取り組みは、農林業センサス(2020年)によると経営体の7%、作付面積の5%となっている。
しかし、全国の農村地域とおなじように担い手不足が深刻化しつつあり、農業従事者は2020年から2030年の10年間で47.5%がリタイアする可能性がある。
②これまでの取り組み
亀岡市では、全国に先駆けてプラスチック製レジ袋の提供を禁止する条例を施行するなど、「環境先進都市」を目指す取り組みをおこなっている。そのきっかけとなったのが、保津川にプラスチックごみが散乱していることだった。そこから、2004年に保津川下りの船頭さんによる清掃活動が始まった。その活動がだんだんと広がり、2008年には保津川の環境保全に取り組むNPO法人プロジェクト保津川が発足した。その動きは、やがて行政も動かして、2015年には亀岡市が「環境先進都市を目指すビジョン」を制定した。
2021年には「亀岡市プラスチック製レジ袋提供禁止に関する条例」が施行されるに至った。
こうした環境先進都市の取り組みの発展として、市として有機農業を推進するようになった。その背景の一つは、新規就農者のなかで有機農業を希望する人が増え、85名の新規就農者のうち24名が有機農業を実践(2021年度)していることである。市としても、農業の担い手の確保、農産物の高付加価値化、農業由来の環境負荷の低減という観点から有機農業の推進を加速化している。
これまでに取り組んできたことは、次の通り。
(1)生産者への補助制度の創設
・有機JAS認証の取得支援(3年間 1年目7/10、2年目6/10、3年目5/10)
・土壌診断の費用の補助
・給食での有機米・野菜購入に対する差額支援
(2)保育所・学校給食への有機野菜・米導入
有機農産物の販路確保のための出口戦略として、保育所・学校給食への有機米・野菜の導入を進めている。小学校の給食は、市内の全ての学校の給食を1ヶ所のセンターで調理している。午前中にすべて調理をして、給食を届けるためには、野菜を機械でカットする必要があり、1日5,000食分となるとある程度形や大きさなどの規格を揃えないとと間に合わない。しかし、現状では、有機栽培の野菜でそれだけそろえるのは難しいので、まず自園で調理をしている保育所やこども園から有機野菜を供給している。小学校については、野菜ほど規格が細かくないため、有機米から進めている。
(3)オーガニックをすすめる団体との連携
・亀岡オーガニックアクション(有機米栽培)
・自然派京都有機農業推進協議会(研修会開催等)
・かめまる有機給食協議会(有機野菜提供・マルシェ)
農水省は、「みどりの食料システム戦略」を打ち出し、2050年までに耕地面積に占める有機農業の取り組み面積の比率を25%にまで引き上げることを打ち出し、国としても有機農業を進める方向へ舵を切った。
亀岡市としても、農水省が進める「オーガニックビレッジ」に手を上げ、2023年2月12日に「オーガニックビレッジ宣言」を発した。これまで有機農業の推進で実績を積み重ねてきた自治体に比べたら、亀岡市はまだ始まったばかりだが、「オーガニックビレッジ宣言」を発したのは全国で二番目だった。
③これからの取り組み
これからの取り組みとしては、有機農業を地域ぐるみで推進するために
①地産地消・給食への展開拡大
②有機農業の学校(来年2月開講)による育成プログラム
③亀岡市独自の有機認証制度の検討
④有機農業の拠点としての「オーガニック・ビレッジパーク」の整備など、市民参加の推進
などを進めていく。
以上のような荒美さんの熱のこもった講演にたいして、参加者は熱心に聞き入っていました。講演後の質疑応答でも、「亀岡市の有機農業への予算はどれぐらいになっているのか」「プラスチックごみをなくす活動と有機農業推進とを結び付けて欲しい」「有機農産物を選ぶという消費者の意識改革も必要ではないか」「有機農産物が一部のお金がある人だけでなく、お金のない人にも行き渡るようにしてほしい」など、様々な角度からの質問や意見が出され、荒美さんとのさらに討論を深めました。
このイベントの後半では、農業にとって大事な種子の問題を考えるための素材として、映画『種子とゲノム』が上映されました。この問題についても上映後、意見交換がおこなわれました。